トーキョーエイリアンブラザーズ(1~3話)│冬ノ介とココロの機微
日本テレビ系深夜ドラマ「シンドラ」第5弾
『トーキョーエイリアンブラザーズ』
自担 伊野尾さんの初主演となるこのドラマを、なんとも言えないキモチでみています。
なんとも言えないというのは……つい冬ノ介に感情移入しすぎてしまい、ヲタクの浮かれた感情がぶっ飛んでつい冬ノ介に過保護になってしまうから。
毎回はじまる直前までは「伊野尾さん」の出演を楽しみにしているのだけど、ドラマがはじまったその瞬間から私は「伊野尾さん」ではなく「冬ノ介」を見ているのです。
冬ノ介にとっての「人間」とは一体なんなんだろう?
冬ノ介にとっての「兄」とは一体なんなんだろう?
冬ノ介は今どんな気持ちなんだろう?
侵略対象・調査対象でありながら、人間の「面白さ」に魅了されている様子の冬ノ介。しかし地球で人間としての生活には欠かせない、人のココロの機微がわかっていない。
そのココロの機微を悟るきっかけになるのが兄の夏太郎。
夏太郎が地球に来たことで、どんどんかき乱される冬ノ介のココロが3話にしてもうすでに切ない。
1~3話に見る「冬ノ介」が、どんなエイリアンなのか少し考えてみたいと思います。
※以下ネタバレ含みます。
冬ノ介の 部屋に見るオカシナ日常
部屋の全てが「ちょっと変」。
たくさんの研究材料兼ペットの動物たち。
一体どれが正しいのかわからないたくさんの時計。
ビニール傘に赤ちょうちん。
のれん代わりのゴム手袋。
扇風機に取り付けられた風車。
地球儀やタワシ、埴輪など謎のコレクションたち。
おそらくどこかで見たものを模倣したり、気になったものをコレクションした結果、こんな部屋になったのでしょう。
まさに「意味のないものだらけ」。
COSMIC☆HUMANのジャケ写に登場するボールも転がってる。
片手間にちゅーちゅーする歯磨き粉は「ピカっとミガケル君」。
グイっと喉を潤す洗剤は「ツルリとオチる君」。
どうやらこのシリーズは美味のようだ。
冬ノ介「そのうちわかるよ」
地球にきたばかりの夏太郎兄ちゃんは、もちろん地球のことを何も知りません。服を着ること、食べちゃダメなもの、笑顔の作り方、人との関わり方、塩分の恐ろしさ。
「この顔ができないとこの星で行きていくの、けっこうキツイと思うよ」
「言っとくけど、地球ってけっこう怖い所だから」
こんな言葉を発する時の冬ノ介は、一瞬温度をなくしたなんとも言えない顔をする。
ジャポニカの「じゆうちょう」に、びっしりと書き留められた冬ノ介流の「地球の歩き方」を見ればわかるように、冬ノ介がたった一人で地球に来た時、どれだけの怖い思いと、キツイ思いをしたのだろう。
笑顔を習得して、人たらしな冬ノ介なりの生き方を手に入れるまで、どれだけ怖く寂しく辛かったのだろう。
事あるごとに冬ノ介が兄に言う、「そのうち分かるよ」。
夏太郎が来るまで、要はこの物語がはじまるまでの冬ノ介のことを思うと切なくて仕方ない。
ひとりぼっちで踏ん張って、耐えて、身をもってわかった人間の怖さと面白さ。冬ノ介の「そのうち分かるよ」には、ひとり戦いぬいたプライドが現れているように感じる。
こんなに地球に馴染んでいるように見える冬ノ介も、デート前には予習復習を欠かさない。それほど冬ノ介は勉強熱心なのだ。
冬ノ介にとっての「ニンゲン」
これが一番、言葉にするのが難しい。
「バカだよね、侵略されるとも知らないで」
「触れるだけで思考はダダ漏れ。記憶削除も簡単だし。」
「でも、面白いんだよね人間って」
「人間てさ、未知なんだよね」
こんな風に調査対象であり、侵略対象として蔑んでいるようにも思えるが、だが一方で心惹かれる”何か”に揺さぶられているのもわかる。
それは第2話の犬を亡くしたオバサンや、動物園デートの相手ゆかちゃんのくだりに顕著である。
「ダダ漏れ」の思考を読んで、相手が「してほしいこと」を「やさしく」してあげたつもりの冬ノ介だったが、ぶん殴られたり怒鳴られたりする目に遭うわけだ。
「なんなんだよ優しくしてやったのに。意味わかんねーことだらけ!…でもそういう生きものなんだ人間て。」
思考ダダ漏れのバカな生き物だけど、一筋縄でいかないからこそ面白い。
冬ノ介は人間が「好き」なのかな。それとも研究対象として興味深いのかな。それはまだわかりません。
夏太郎兄ちゃんの描き方
1話30分という短い時間のなかで、「夏太郎の不思議な魅力」の描き方が秀逸だなぁと感動しています。
それは第3話に顕著。
冬と同じコンビニでバイトを始めようと面接に臨むシーン。冬は「僕が面倒みるんでなんとか!」と夏の仕事に対してイニシアチブをとろうとしますが、コンビニのオーナーは物言わぬ夏太郎に何か感銘を受けてしまった様子。それを察した冬ノ介のなんとも言えない表情よ。。。
自転車の練習に失敗した帰り道、自転車やのオヤジさんも無料で自転車を直してくれたりもします。
夏太郎に愛を教えるために冬ノ助があつらえたはずのガールフレンドのはるるちゃんも、「お兄さんステキ」とココロを奪われてしまいます。
ささいな情景描写のなかにも夏太郎がもってる「ゴツゴツした愛」(CV;はるるちゃん)が描かれているんですよね。こんな小さなエピがあるからこそ、「夏太郎は生まれ持って人に好かれる魅力がある」ことを印象づけ、人間を”勉強”している冬ノ介との「差」を鮮明に演出しています。
夏太郎に対する冬ノ介の感情
なんて呼んだらいいのか、きっと名前もしらない。経験したこともない感情が冬ノ介を侵食していきます。
冬ノ介にとって夏太郎兄ちゃんは、元々ちょっと「ダメな兄」だし、しかも地球探査においては「後輩」。だから単純に兄にイニシアチブを取れば嬉しい。
兄コンビニで働かせて”アゲル”とき。
はるるちゃんを使って兄に愛を教えて”アゲル”とき。
実に屈託のないかわいい笑顔をする。
一方で「地球ってけっこう怖いところ」であることを身をもって学んだ冬ノ介は、大した努力もなく(そう見える)、他人の評価を得る兄が悔しくて妬ましい。
コンビニのオーナーが兄を受け入れた時。
はるるちゃんが兄に抱きついた時。
一瞬にして色も温度も全てなくしたこんな顔をする。
一人でたくさん努力してきたからこその承認欲求と自己実現欲求。
こんな気持ちは、人間ならみんな共感できる、実に人間らしい感情なんだよ冬ちゃん。
伊野尾さんの演技にスタオベ
ここからストーリーが進むに連れ、冬はますます思考ダダ漏れのバカな生き物である人間と、デキないダメ兄貴の活躍にココロの余裕を奪われていきます。考えるだけで切ない……。
伊野尾さんの演技を見るのはピチガ以来約1年ぶりですが、今回は本当にその演技に驚かされています。
「この顔ができないと、この星で生きるの結構キツイと思うよ」
かわいい笑顔だけど伊野尾さんの笑顔じゃない。冬ノ介の”作られた”笑顔。
動物園デートで相手とはぐれ「面倒クセ」と言い捨てる冬。
完全に無気力の「面倒クセ」。人間は少し苛立ちが混じりそうなもんなのに、まったくの無気力。その目すらも。
はるるちゃんと夏兄ちゃんがちゅーしかけたのを邪魔して「もうダメ耐えらんない」と爆笑する冬。カメラアングルがまた秀逸で無邪気な悪意が、鮮やかですごい(語彙力)
「がんばってね~」と言いながら手を振る冬。
すっとんきょうな表情なのに温度がまるでない。怖い。
「冬ノ介」としてしか見られない表情がこれから先もたくさん登場することでしょう。
そのたびに俳優 イノオの繰り出す演技に魂抜かれちゃうんだろうな。
カラフトを機に演技が抜群に上手になった伊野尾さん、エイリアンブラザーズでまたど進化してる…!!!
おまけ:OP画面も侵略されてた
トーキョーの名所が次々と現れるCGアニメーションのような印象的なオープニング。
タイトルロゴが出てきたあと、エイリアン原型→夏冬にそれぞれ変身して、留絵になるのですが、ここにもご注目!
ビミョーに毎回ポーズや表情が違うんです。これから先もちょっとずつ違うんじゃないかな?ささいな楽しみも細部まで行き届いています。
第1話:
(冬)一番Tシャツでにっこり
(夏)バスローブでむむっとした顔
第2話:
(冬)一番Tシャツでにっこり
(夏)バスローブで腕組み
第3話:
(冬)一番Tシャツで首コテン&腕後組のぶりっこポーズ
(夏)虎Tシャツで真顔
本日の第4話は、ザテレビジョンが”心ない目と心ない発言にゾッとする” 『冬ノ介ホラー』と称する回。
楽しみすぎる。